1 忠実義務と善管注意義務の違い
取締役をはじめとする役員および会計監査人(以降取締役にまとめる)は、忠実義務(会社法(以下省略)355条)、善管注意義務(330条、民法644条)を負う。
取締役と会社は委任契約となる(330条)となるため、民法の委任の規律に従い、善管注意義務を負う。そして、355条は忠実義務を規定する。この二つについて、日本の裁判所は同一の意味であるとする(百選2)。ただ、会社と取締役の利益が衝突する場合を忠実義務、それ以外の場面を善管注意義務として慣習的に説明されることが多い。整理として理解しやすいからである。以下はめんどくさいので全部忠実義務という。
2 どのような場面で問題となるか
試験上の問題としては、問題文に取締役の行った行為が書いてあって、責任を問えないかという形で出てくる。
つまり、423条によって、取締役に任務懈怠があって会社に損害を与えた場合に損害賠償させるのであるが、この要件が、①取締役が②任務懈怠をして、③会社に損害を与え(損害額)④任務懈怠と損害の間に因果関係があったときであるが、このときに、②任務懈怠があるか否かの判断のときに忠実義務違反があるかを判断させる。
3 思考フレーム